ANOTHER DAY / LENE MARLIN
　ノルウェーはトロムソ出身のシンガー・ソングライターであるLene Marlinから４年ぶりに届けられたセカンド・アルバム('03年)。デビュー・アルバムがあまりにも売れてしまったことで周囲から受けるプレッシャーが我々の想像を遥かに越えるレベルへ達したため、しばらく音楽活動から離れ休養していたというLene。必ずまたファンのもとへ戻ってきてくれると信じつづけていてよかった…今この瞬間にそう思っている人は少なくないのではないだろうか。トレンドを意識した音作りをするというよりも、独自の世界観を音符というツールを用いてまるで絵を描くかのように表現し我々に提供してくれる北欧の天使。Guitarを軸に組み立てられた楽曲はどことなく切ないのだが、現実から目をそらすことなく明日へと向かって着実に歩んでいこうとするポジティヴさを随所に感じさせる。Leneが辛かったであろう苦悩の時を乗り越えてきたからこそ、日の光を見ることができた詩と曲達。その温もりと優しさがとても嬉しかった…生きた心地がしない危機感から救われたようにさえ思われたあの感覚は、迷子が母親に迎えにきてもらった時に流す安堵の涙と似ているかもしれない。とにかく、心が安らかになるのだ。爽やかな曲調が身も心もリフレッシュさせてくれる"Another Day"(１曲目)、サビにおける叙情メロディがあまりにも優しく響くものだから思わず涙がでてきてしまったポップ・ロック・チューン"You Weren't There"(３曲目)、オーロラ漂う北欧の夜空を思い浮かべながらLENEはいつどこでこんなにロマンティックな曲を書いていたのだろうかと考えてみたバラード作品"My Love"(６曲目)、憂鬱な時にはポンと背中を押してくれそうな曲に思えた"Whatever It Takes"(７曲目)と"Disguise"(９曲目)辺りを特にお薦めしたいが、はっきり言って全て良い！ 心が込められた癒し度の高い"Another Day"を耳にした途端、巷に溢れているヒーリング音楽が素っ気ないものに感じられてしまった。レネ、お帰り…あなたに、たくさんの祝福がありますように！ '03年のベスト５入り決定！　　　　　　（Little Rock）


HOTEL PAPER / MICHELLE BRANCH
　米国はアリゾナ州出身のシンガー・ソングライターであるMichelle Branchによるセカンド・アルバム(EU盤、'03年)。「これが本当に私の作った作品？」と本人が驚くほど圧倒的な完成度を誇っている今作はとてもパーソナルだが、デビュー・アルバム『THE SPIRIT ROOM』発表から約２年間でずいぶん大人になってしまったなぁ〜という印象を受けた。心を覆い隠していたモヤモヤを一気に取り払ってくれる軽快なロック・チューンをアクセントとして配置しつつも、語りかけるようにじっくりと聴かせる曲主体に構成されているため癒し度は高い。あまりの切なさに胸が締めつけられるような思いをさせられるスピリチュアルな曲からは、悩みや寂しさを共有することができる誰かを求めているMichelleの心の風景を僅かかもしれないけれど見ることができたような気がする。自分で決めたことには責任を持たなければならないということを歌っている"Are You Happy Now?"(２曲目)、考えごとをしていて眠れないまま朝を迎えてしまった時には何よりの良薬となっている"Tuesday Morning"(５曲目)、心温まるピアノのメロディと切なげに歌うMichelleの声がまるでお互いの気持ちを理解しあっているかのように一体となっている様が圧巻である"One Of These Days"(６曲目)、KID ROCKと"Picture"(COCKY，'01リリースに収録されている)でデュエットするなど相変わらず精力的に活動しているSheryl CrowとMichelleの声質の違いを楽しむことができる"Love Me Like That"(７曲目)、ファースト・アルバムで最もインパクトがあり本格的な女性シンガー・ソングライター・ブームの到来を感じさせた曲としていまだに忘れることができない"Everywhere"を彷彿とさせる軽快なロック・チューン"Breathe"(９曲目)、野原で吹いている秋風のように穏やかな曲調がリスナーをホッとさせることだろう"It's You"(13曲目)、情熱に溢れたGuitarソロを楽しそうに弾いていた姿が記憶に新しいSANTANAとの共演シングル"The Game Of Love"(14曲目)などがお薦め! もう少し気温が低くなってきたら、『HOTEL PAPER』を持って誰もいないビーチへ行ってこようかな…。（Little Rock）


RESTLESS / SARA EVANS
　'03発表作(4thフルアルバム)。映画「コヨーテ・アグリー」のテーマ・ソングを歌ったことでも知られているリアン・ライムスに続く歌姫として期待・応援しているサラ・エヴァンスの力強くて安定感があるヴォーカルと久しぶりに故郷へ帰ってきたなぁ〜という感覚を家に居ながらにして味わうことができる雰囲気に改めて魅了され、ついアルバムを手にとってしまった…(笑)。トリーシャ・イヤーウッド，フェイス・ヒルなどもうすっかりお馴染みの女性Voにも言えることだけれども、大平原を思い起こさせるようなスケールの大きいバラードにおける繊細な表現が見事である。アルバム収録曲で最もキャッチーな"Need To Be Next To You"(６曲目)、ややアップ・テンポで踊れてしまいそうな"To Be Happy"(７曲目)、ドレスをお洒落に着こなした女性やカウボーイ・ハットをかぶった男性が集まっている陽気なバーをイメージさせられた"Suds In The Bucket"(13曲目)辺りがお気に入り。エスプレッソを飲みながら果てしなく続く大地を心ゆくまで眺めたい、そんな気持ちにさせてくれる一枚だ!　　　（Little Rock）