FORTUNEの『MAKING GOLD』は大好きな１枚だった。今にも泣き出しそうな軟弱で不安定なヴォーカル、ソロはありがちでリフもあまり考えてなさそうなギター、およそ自己主張というものが感じられないリズム隊、中心人物なんだからもっと目立てばいいのにやたら控え目なキーボード、これが集まって何故かあそこまで格好良いハード・ポップ・アルバムが作れたのか、今でも不思議でならない。ちなみに私が『MAKING GOLD』をホメまくったもんだから、それにつられて（かどうかは知らない）『MAKING〜』を購入し、「こんな軟弱なヴォーカルは聴いてられん！」と怒ってすぐに売り飛ばした長髪で早口でハイ・テンションな男を私は知っている。もし万が一、あの時の君がこの文章を読んでいたら、即刻考えを改めるように。
さて、そのFORTUNEのKey兼VoがGLORYのG＋EUROPEのリズム隊と組んだニュー・プロジェクトがこれである。やっていることは『MAKING GOLD』と全く、完全に、どこまでも隅から隅まで同じ。従って、私としては何も文句はない。美しいメロディなのにすぐ終わってしまって欲求不満になるというサビの組み立て方まで全く同じで、嬉しくなる。タイトルが開き直りすぎなのは、さすがに顔が引きつったけど。（アマリリス）
BEAT THE BASTARDS / EXPLOITED
「Punks Not Dead!」という有名な言葉を生んだイギリスの老舗バンドの新作。コリン・リチャードがプロデューサーだし試しに聴いてみたら、これがもうとんでもなく強烈なメタル寄りのハードコア。全編が鋭いリフと怒濤のスピードに満ちています。もうちょっとキャッチーな部分があてもいいかなという気もしますが、とにかくメタラーもパンクスも納得！の１枚。（ナンシー関野）
THE SPECTRE WITHIN / FATES WARNING
アルバム単位ではFATES WARNING初体験。'84年発表のこの2ndを語る上ではヴォーカリストのジョン・アーチを無視するわけにはいかない。それぐらいの存在感があるのだ。でもそれは必ずしも肯定的な意味ではないんだけどね。この人「ア〜ア〜」というシャウトでメロディを付けるのが趣味みたいで、たまあにならかっこいいのかもしれないけど、こうも連発されるとホワイト・キック（死語）って感じ。高音はよく出るし、ヘタではないけどあと一歩のところでセンスの悪さを露呈しちゃってる。これではDREAM THEATERのオーディションに落ちるのも当然か。ルックスもチョベリガンブロンだしー。でもこのアルバムを切り捨てるわけにはいかないのはアーチの歌う神秘的メロディとシャウトが珍しくプラスに作用してる"The Appartion"というＢ級とＣ級の綱渡りをしているような危なっかしさが魅力の曲があるから。曲自体はIRON MAIDENを幻想的にしたような妖しげなHMで悪くないし、ヴォーカリストが交替してから出したアルバムも向上していることを期待して聴いてみようという気にはさせてくれた。（ナンシー関野）
RELISH / JOAN OSBORNE
BON JOVIの前座に起用された女性シンガー。でもHRではなくもないが、Jon Bon Joviが好きそうな土着的アメリカン・ロック。BON JOVIのその手の曲は根が産業ロック体質（別に悪い意味ではない）なおかげで聴きやすい仕上がりで僕にも楽しめるけど、この人の音楽は断然濃厚。BON JOVIが普通の喫茶店のパフェだとすれば、彼女はシャノアールのビックパフェ。大ヒット曲"One Of Us"は名曲だし、他にもいい曲はあったけどアルバム全体としては好きになりきれませんでした。アメリカン・ルーツ・ミュージック愛好家向けかな。ちなみに彼女を全面的にバックアップしているエリック・バジリアン（HOOTERS）は夏に出る予定のJonのソロ・アルバムでもJoNと共作しているそうです。一体どんな曲ができるんでしょうね？（ナンシー関野）
LAY DOWN THE LAW / KEEL
何を思ったか突然欲しくなって買ってしまった。音の方はカセット・テープで持っていて飽きるほど聴いているのだが、やはりこのころのレコードはどんなにダサダサでも持っとかなあかんかなということです。LAメタル全盛の頃RATTやGREAT WHITEは好きだったが、このKEELはそれほどでもなかった。最初に聴いたのは2nd『THE RIGHT TO ROCK』の方で、そのときはタイトル曲以外は好きになれなかった。その後、この『LAY DOWN THE LAW』を聴くわけですが、やはり今一つで、敢えて言えばよかったのは"Speed Demon"だけで、その"Speed Demon"も『THE RIGHT TO ROCK』に入っているのでこのアルバムに対する評価はすごく低かった。どうもKEELって淡泊過ぎるんだよねぇ。聴きどころがないっていうか、一本調子というのか。何もないままアッっという間に終っちゃうんだから。それなのに今になってレコードを買わせるなんて。恐るべし、乳もみジャケット。（向井孝司）
